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成長の秘訣は運 運を引き寄せた従業員への思い

成長の原動力となる
従業員への「やりがい」の提供

 (株)リュウセイの躍進を支えている要因の1つが「人財」だ。同社は採用専用サイトを開設して24時間対応で採用活動を行っている。同社は急拡大しているにも関わらず、専用サイトに独自の仕掛けを施すことにより、人材不足が指摘される業界にあって必要な人材を確保できている。また、採用した人材の定着率の高さも武器だ。
 同社では事務員、倉庫作業員、ドライバーとして採用した従業員のなかから力を付けた人たちを積極的に幹部に登用している。代表取締役の井上竜毅氏は「スタッフに有能な人たちがそろっている」と語る。
「自分はまだ学んでいる段階」として理念浸透やビジョン提示は道半ば」と語る井上氏だが、人材定着に向けた環境づくりに注力してきた。人材のほとんどが代表の井上氏より年上という状況にあって、遠慮のない関係を構築。会社の方向性で意見をぶつけ合える社風をつくり上げた。また、「ビションを提示してこなかった」とする井上氏だが、一度口にしたことは具現化してきたという。各々の考えで自主的に動く集団となったのは「そうしたところにやりがいをもっていただいたからではないか」と分析する。ダイバーシティマネジメントにも着手し、今後は就労ビザをもつ外国人の長期雇用を推進する予定だ。伝票を扱う業種柄、一定の読み書きのスキルが必要となるが、現在「読まなくても業務可能なシステムの開発に着手しており、多様なニーズに応える準備を行っている」という。

苦難を経て
足元をみつめる

 井上氏は学卒後、運送業に従事、21歳の時に福岡の魚市場に出入りするようになり、仲卸など鮮魚業界関係者との縁ができた。2年後に起業し、今日の規模に拡大した。傍目の急成長ぶりとは裏腹に井上氏は「いばらの道だった」と振り返る。当時は午前2時に起床し、午前3時からの魚市場のセリの時間に間に合わせた。自分の業務や配送手配、荷揚げを午前7時までに行い、自らトラックに積み込み午前10時までに配送。その後、山口県下関市で鮮魚の配送・手配を正午ごろまで行う。終わり次第、福岡に戻り、翌日の準備などを行い午後10時に帰宅するという毎日だった。
 拡大過程では依頼先の要望に可能な限り応える体制を構築。魚市場ではセリから参加し、業界関係者に受け入れてもらった。また、輸送だけでなく物流体制を整えて業務の幅を拡大した。外部委託の業務はいとわず受け入れてきた。ところが、取り扱い品目を生鮮以外に拡大した際、事業の見直しを迫られる。他社の低価格攻勢に晒されたのだ。業務量も増大し、経営環境はいわゆるブラック状態に陥っていた。売上は伸びたが、このままでは「従業員がもたない」と判断。その品目からの撤退を決断した。この選択による売上減少を懸念した従業員は同社を去っていった。
 しかし、後にその選択が間違っていなかったことがわかる。価格攻勢で他社の仕事を奪っていた多くの同業者が淘汰されていくのを目の当たりにしたのだ。井上氏は業界の横のつながりの重要さを痛感。積極的に同業者とコンタクトを重ねた。関西、関東地区の業者とは協業関係を築き、業界団体も立ち上げた。幸い時代が変わり、顧客もドライバー不足の業界環境を理解してくれるようになった。収益性の低い品目から撤退した事業の代わりに参入した部門が利益率を引き上げた。全体の収益性が高まった結果、頑張ってくれる従業員に還元できる体制が整い、会社にとどまってくれた従業員が強固な団結力をもつ集団となった。

裕福な生活を夢見た起業から
従業員満足を目指した経営へ

 「従業員が満足しないとお客様は満足しない」とする井上氏が最も重要視するのが人材中心の経営だ。決して裕福ではない幼少期を過ごした井上氏は「お金持ちになりたい」一心で経営者となった。必死に働き、規模を拡大したが、従業員の引き抜きなどもあり、経営面でも精神面でも追い込まれた。そこで、井上氏は酒とタバコを絶つ決意をする。すると経営の先輩や、よき相談者を得るようになり、事業も精神面も、より強くなった。以来今日まで、その決意を守り通している。運送業界ではドレッジ輸送などAI(人工知能)活用の研究が進んでおり、いずれ、あらゆるかたちで影響を受けることが予想される。井上氏は、その際はむしろ新たなビジネスチャンスが生まれると見ている。いったん雇用した人材を切り捨てる安易な「人からAIへの乗り換え」という考え方は経営を危機に晒すと見る。「そうした考えの企業は、時代の変わり目である今の時点で淘汰されていくでしょう」と語る井上氏。
 「趣味は仕事」という井上氏の楽しみは、いかに快適な労働環境を提供するかを考えることだ。同社の車両はドイツ製のシートなど目立たないところに多大なコストを投じている。

「令和」でも変わらぬ
顧客本位の姿勢

「いばらの道」を乗り越えた同社は「令和」に入っても顧客本位の姿勢を貫くという。気が付けば同社の輸送エリアは一部、南九州を除く九州全域や本州へと広がった。柔軟な対応力を評価され、求められる業務は増加し続けている。今後、M&Aも視野に入るはずだが、井上氏にその選択肢はないという。自社の理念や手法を理解する自前の人材で新たな組織を立ち上げた方が、早く結果が出ると考えるからだ。令和の時代も「怒涛の昭和を生きた先輩に学び」愚直に宿題に応えていく顧客本位の経営を続けていくという。

2019.07.08 mon No.2450 企業特報I・Bより
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